ケーススタディ6:事業承継
Tさん(72歳)は親から引き継いだ中小企業の経営者で、その過半数の株を所有しています。ただ、ここ数年は病気を患い、現在は実質的には会社を長男に任せた状態になっています。自身が認知症などになる前に、できるだけスムーズに長男に事業継承したいとは考えていますが、長男はまだ経営経験が浅く、今すぐに会社のすべてを長男に任せることには不安があります。
目的 | 事業のスムーズな承継 |
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委託者 | 父親(Tさん) |
受託者 | 法人(代表者 長男) |
受益者 | 父親【設定時】→ 長男【相続発生時】 |
信託財産 | 父親 |
信託終了 | 持ち株全て:自社株90% |
受託者を法人とすることで、Tさんが万一認知症になった際には、法人の代表者である長男がかわって議決権を行使でき、企業経営が滞ることはありません。また、Tさんを指図権者に設定しているので、長男の経営が心配な時は、Tさん自身が経営の重要な決断をすることができます。
大きな財産を長期間管理するケースでは、法人を受託者にした方が、複雑な事務手続きを社員で分担できます。また、受託者個人が不慮の事故などに遭い信託が終了してしまうようなリスクも、法人であれば避けられます。Tさんから法人に株式を信託財産として運用を託しても、贈与税も譲渡所得税もかかりません。