ケーススタディ3:共有トラブルの回避
Iさんの父親は8年ほど前に他界。生前にアパート経営を営んでいて、そこで築いた財産を母親が相続しています。母親は84歳と高齢で、最近は外出もほとんどしなくなり、いつ認知症を発症してもおかしくない状況です。母親が認知症になり、相続が発生した場合、Iさんは収益不動産が仲が悪い末の妹との共有状態になるのを懸念しています。
目的 | 不動産共有を回避するため |
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委託者 | 母親 |
受託者 | 長女(Iさん) 第2受託者 次女 |
受益者 | 母親【設定時】→ 長女・次女・三女【相続発生後】 |
信託財産 | 収益不動産:一棟アパート |
信託終了 | 不動産を売却したとき(築年数が古く、10年以内に売却を検討) |
Iさんが母親に代わってアパート経営を行い、そこから得られる家賃収入を当初は母親、相続後は長女、次女、三女の三人で均一に分け合う契約にしました。売却・建て替えなどの権限は、受託者である長女を所持します。次女と三女は、家賃収入と売却したときの売却益をもらえる権利を持ちますから、姉妹間で揉める心配はありません。
Iさんの希望は「資産を妹に渡したくない」ではなく、あくまで「相続によって、現在の暮らしが壊れるような揉め事をつくりたくない」ということでした。そのため、権利を一本化するという今回の対策が有効であり、「姉妹で仲良く財産を分けてほしい」という母親の願いも叶えることができました。
不動産を共有名義で所有すると、大規模な修繕工事をするにしても、売却するについても名義人全員の同意を得る必要があります。Iさんのように相続人同士の折り合いがもともと悪いというケースではなくても、不動産経営を複雑化させる共有は避けたいものです。